「韓国〝脱・反日〃の行方ー尹政権の苦闘」
ハン・ガン氏のノーベル文学賞受賞は、韓国の今年最大のニュースだ。背景には近年の国力の増大に伴う文化力の拡大、韓国の“先進国化”がある。
米大統領選でトランプ氏が再選され、日本は“またトラ”への対応を迫られるが、トランプリスクへの議論がなされているのは韓国も同じだ。日本では安倍政権時代のトランプとの付き合い方が評価されるが、韓国には安倍氏のような政治家は見当たらない。
トランプ政権になれば、韓国では経済面、安全保障面、対北朝鮮の3つのリスクが危惧される。韓国経済への米国の影響力は大きく、在韓米軍の経済負担も増える恐れがある。韓国を差し置いて再び米朝首脳会談を行う可能性も高い。
尹大統領は徴用工問題、福島問題で日本に譲歩し、“脱・反日”を明言、実践する初の大統領となった。外交問題は沈静化し、日韓関係は極めて良好だ。韓国人の2割が日本へ旅行し、食文化やファッションで日本ブームが起こっている。しかし、議会を野党に支配され、人事も思い通りにいかず、国内的には苦闘しているのが実状。支持率20%を割り込み、あと2年半政権を安定的に維持できるかが問題だ。
先の大統領選で尹氏に僅差で敗北した最大野党のトップ、イ・ジェミョン(李在明)氏は、次の大統領選への出馬に意欲を見せている。“韓国のトランプ”と称される彼が大統領になった場合のリスクについて日本も想定すべきであろう。
尹政権の支持率低迷には、尹氏の会見嫌い、メディアとの距離感も一因だ。7日に夫人の疑惑を巡って釈明会見を開いたが、国内でさらに批判が起こることになり、異様なメディアによる“ストーカー”政局になっており、落としどころが見えない。
韓国在住40年の黒田氏は、尹氏やイ・ジェミョン(李在明)氏の人物評、尹氏とトランプ氏との相性について分析。「検事出身の尹大統領は世論を気にせず、人の話も聞かないが、周囲に配慮できる親分肌でトランプ氏とは気が合いそうだ。石破首相とは合いそうもない」と持論を展開した。また、来年の日韓国交正常化60周年を見据え、尹政権の対日姿勢を定着させるための様々な提言を行った。このほか、ノーベル文学賞を受賞したハン・ガン氏の経歴や、翻訳者の育成など韓国の官民挙げての支援体制についても解説した。